取り外しの義歯、つまり入れ歯。入れ歯と聞いただけで「イヤだ!」という患者さん。歯の抜けてしまったところに入れ歯を入れて噛みやすくすることにより、残りの歯に過剰な力が加わらず、残りの歯が元気でいられます。
そして歯というのは、歯のないところに向かって隣の歯や、相対する歯が伸びてきたり、倒れてきたりする性質があり、経年の放置により歯が少しづつ移動し揺れてきます。
揺れが大きくなると、むし歯でもないのに、歯を失うということにもなりかねません。
これを防ぐのは入れ歯の装着です。
残りの歯を守るためにも、入れ歯を入れるということは、とても大事なことです。
入れ歯ができあがって、「さぁ!硬いものでも何でもおいしく食べたい!」と思われる方もいると思います。
しかし、例えば新しい革靴はちょっと歩いただけでも靴擦れするように、お口の柔らかい粘膜の上に堅い義歯をはめるのですから、うまく使えるようになるためには練習と慣れが大切なのです。
最初は、柔らかい物や小さく切った物を奥歯でゆっくり噛んでください。入れ歯の前歯で噛むと、入れ歯が動いたり、前歯部の粘膜や顎の骨に負担がかかり過ぎることがありますので注意しましょう。奥歯で左、右と両側均等に噛むようにしてください。
痛みがあれば、主治医に言って治してもらいましょう。
だんだん硬いもの、大きなものにうつして行く段階で、主治医とよく相談して、調整を繰り返して、かなり慣れるには一ヶ月、ほとんどの物が食べられるようになるには3ヵ月程度の期間を要するでしょう。
無理な使い方を避けて、一つ一つ段階を経て練習を続けていくことが大切です。
硬くて歯切れの悪いイカ、タコ、アワビ、硬いパンの皮やこんにゃくなどは包丁で細かく切れ目を入れて歯切れをよくしたり、肉では薄切りを重ねてボリュームを出すなど、調理で工夫すると家族で同じ食材を楽しめます。
ごまやイチゴのつぶつぶは、義歯と歯ぐきの間に入るととても痛いもの。つぶつぶ食品は一度にたくさん口に入れないようにしましょう。もしつぶつぶが入り込んでしまったら義歯を外して早めに取り除きましょう。
義歯に粘着する代表的な食べ物はお餅です。お雑煮のように水分たっぷりにして粘着性を弱めたり、一口を小さくして少しずつ食べれば大丈夫です。
入れ歯の材料はほとんどの場合、強化プラスチックでできています。プラスチックは汚れがつくと落ちにくく、臭いもつきやすい性質を持っています。
食後はブラシで歯を磨く時と同様にやさしくブラシをあててください。留め金の部分は特によくブラシをあてましょう。
手で触って、ヌルつきがなくなればOKです。
当院でも入れ歯洗浄剤を置いていますが、何より大事なのはブラシです。ブラシをした上で入れ歯洗浄剤に浸けましょう。食べカスが付いたままの入れ歯を入れ歯洗浄剤に浸けても消毒にはなりません。
入れ歯も時間が経つと緩んできたり、キツくなったりと合わなくなってくることがあります。
合わない入れ歯を無理に使っていると、入れ歯が割れることもあります。
あなたの大切な入れ歯、一緒にお手入れしていきましょう。